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第一弾 乗鞍の天狗と釣り対決

乗鞍の天狗と釣り対決

乗鞍の山を知り尽くした男 福島立實 
山岳ガイド、 スキーの名手、岩魚職漁師等々 数々の肩書きを持ち、今なお山と共に生きる男。大自然の王者がゆえ「天狗」とも呼ばれる。
今回はその彼と「テンカラ」釣り対決(岩魚釣り)
「テンカラ」とは日本古来の「伝承毛針釣り」。
岩魚の職漁師さんは多くがこの釣法であるのだが、技術的にとても難しく「一匹釣り上げるのに一年はかかる」と言われている。
実はわたくし隊長 この釣りを初めて27年 ちょっとは自信がある。
乗鞍の天狗VSサンデーバーズ隊長
果たしてこの勝負の行方は?

ちょいと前に、本を読んだ。『「岳」はおれの学舎』と言う本だ。
その本をお書きになったのが福島立實さん。今回の釣り対決の相手だ。
彼は65年間のほとんどを山で過ごし、動物の事も植物の事も山の四季も食べ物の事もそしてもちろん岩魚の事もなんでも知っている。(植物なんか山に生えているモノの名前97%くらい正確に覚えているらしい スゲ〜よね?)
そんな方に勝負を挑むのは無謀っちゃ無謀だけど、今回は山全般の対決じゃねぇ!山における総合能力がタツミさんが100とするなら、わたしは3くらいなのは重々承知だ。しかし今回はもっとも得意なテンカラ釣り。これならば多少の勝機は見込まれるかも?と言う事で9月の下旬に乗鞍を訪ねた。
釣りは朝マズメ夕マズメと言われるくらい、朝と夕方が釣れるのだが途中、「合掌」って名前のそばやさんで「とうじそば」なるものをたらふく食べて動けなくなってしまい、到着したのがお昼。対決!なんて勇んだ企画でやって来たのに精神がたるみきっているそんなわたしに嫌な顔ひとつせずタツミさんはやさしく迎えてくれた。
はじめて会うタツミさんは想像してたよりも「静」な方だった。
そしてこぼれた笑顔になぜか「風」を感じた。
本を読む限りとてつもなくエネルギッシュで、情熱の塊の様な方を想像していたので多少戸惑ったが、はやく渓流に出かけ「静」から「動」に変化するその瞬間が見たくなった。
そして、お天道様が燦々と降り注ぐ川へと出かけた。(そんな太陽が降り注ぐ中、岩魚はなかなか釣れないのだが、、、)
連れて行ってもらった川は水が流れてる幅は広いところで10Mくらい、水量は少なめだけどコンディションはまずまず。
タツミさん曰く「今日の状況から想像すると5匹勝負かな?まあお先におやりなさい!」
余裕とまたまた素敵な笑顔。
いやいや!ここで先に竿を出したんじゃ気持ちがアセっている事が悟られてしまうので
「すみません!どうか先に見学させてください」とタツミさんに先行して頂く。

釣り対決スタート!!しかし見よ!この余裕。

取り出した竿は4Mちょっとラインも同じくらいの長さ。もちろん毛針は自家製。そして河原におもむろに立つと何の音もなく竿を降り始める。空気を切る音すら聞こえない。とてつもなくやわらかで無駄のない動き。それでいて振り込まれた毛針は確実にピンポイントに飛んで行く。1ポイント3回打って魚が出なきゃ次のポイントに移動。その動きも小石を踏んで音を立てる様な事は1度もなく、まるで風のようだった。
そしてその瞬間、わたしは「敗北」を感じていた。

第一投目の竿さばきで完敗を感じてしまった…

「さあ ここからはケイザブローさんが少し楽しんでください しばらく僕は見学させてもらいます」
とてつもないプレッシャーがわたしの背中に掛かって来た。しかし、少なくとも「勝負」なんて言っちゃった手前、ダサイ釣りは見せられない。1投する度に脂汗が流れるくらいの重圧がのしかかって来た。

交互にポイントを攻めて行く。たつみさん見事に森と同化してます。見つけられるかな?

しかし、不思議なもので人間極度に集中すると、自身の潜在能力を超える瞬間がやって来るときがある。
次の瞬間、わたしの毛針にチビ岩魚が飛びついた。
引っこ抜く。
「よかったね」の笑顔のタツミさん。

俺の釣ったチビイワナ。早く放せとたつみさん。

「この勢いでドンドン釣っちゃってください。僕は後半戦その数を追いかけますから、、」
お言葉に甘えて次のポイントも攻めさせてもらう。
いいとこ流してるのに魚からの反応は皆無だ。そしてしつこくしつこく10投以上流したときタツミさんと顔があう。「だめですね?」とわたし。
それなら、、、、とその同じポイントに毛針を落とすタツミさん。
すると嘘のように一発で岩魚が飛び出した。それを電光石火の早業で一気に釣り上げる。
いや〜!なにかのドラマをみてるようだ。
鼻っ柱の強い小僧の弟子をやさしく一撃で黙らせちゃう師匠。
絵に描いたような展開だ。

釣り上げたイワナに対するこの優しい表情。

26.5cmのイワナ。タイミングが良ければここの川ではアベレージ?マジ?

顔は笑っているけど少し引きつったわたしの気持ちを察したタツミさんは、この後、ほとんどのポイントを譲ってくれた。 
良いポイントを譲ってもらえばさすがにそこそこの腕でも釣れる。
でもわたしが数匹かけるとタツミさんが竿を振り、あっと言う間に同数に、、、。
数時間経った時点でタツミさん4匹。わたし3匹。
そしてそろそろタイムアップと言う時、最後の超A級ポイントを譲ってもらった。
毛針を打つ、流す、出ない。毛針を打つ、流す、出ない。ちょっぴり悔しい。
本当ならば多くて10回くらいしか同じポイントを攻めないのだが、この時は違った。何か予感の様なものがしていた。
するとどうだろう!静かに流れる毛針の水面直下を何かが静かに動いた。
ひと呼吸入れてからあわせる。手元に竿を通じて魚の躍動感が伝わる。
体勢を整えてから一気に引き抜く。
うれしくて興奮するたわけもの。それをまるで自分の事のように喜んでくれる師匠。
あれ?いつの間にか師匠になっちまってる(笑)。
そりゃそうだよね?それが素直な感情だよね?
結果は4対4の引き分け。
わたしは面目を保ったのか?保させてもらったのか?

確かに数では同じかもしれない。しかし内容がまったく違う。いや力量、ポテンシャルも全く違うのだ。

この谷に立てるだけで幸せ!まだまだ修行の足りないオレ。

わたしも含めて、数字に取り憑かれた生活を送っている今の世の中。
でも大切なのは数字そのものよりもその中の内容なんだな?となぜか岩魚釣りでわからせられちゃった(笑)。
やっぱり渓流は、いや自然と遊ぶのは最高だね?
そして「風」の様な男、タツミさんに勝負を挑んだ身の程知らず、自分自身が恥ずかしくてたまらなかった。

川を見て、森を見て、山を見る。乗鞍のすべてを知り尽くした男。違うね、やっぱり!

その晩、わたしはタツミさんと時が流れるのも忘れて酒を酌み交わした。
釣りの事、雪山の事、きのこの事、山の話。
そしてとても興味深かったのが熊の話。
最近、本当に各地で被害が出てる熊。
わたしがわけ知り顔で「山に食べ物がないならドングリの樹を植えればいいんですよ!事実それで熊が出てこなくなった事例がありますからね?」と言い放った時、タツミさんの目が一瞬険しくなった。
「ドングリは1年中実りますか?じつはどんぐりの実の季節になるまでの間が一番熊の被害が多いんです だからそのドングリが実るまでの間をなんとかしなきゃいけない」
さらに続ける「実のなる樹で花の咲かない樹はない 花が咲くためには陽が当たらないといけないだから樹を植えるだけじゃなく適度に間引く事も必要なんだ!」
「太陽が降り注ぎ、下草がおおい茂り、森自体が健全になる。健全になればエサが増える。さらに日があたる事によって熊が大好きなエゾアカヤマアリが増えるとさらによろしい。熊はそのアリの蟻酸が大好きだからさらに山からおりてこなくなる。机上の空論じゃだめなんだ!山の事は山を良く知った人間にまかせなければ、、、」(かなり酩酊状態で聴いたので正確に伝わってないかもしれませんが僕にはこう聞こえました!間違ってますかね?師匠?)
そして今なおあの言葉がわたしの中でリフレインする。
「すべての樹には花が咲く 花の咲かない樹はない 桜や梅の様には注目されないドングリの様な樹にも花は咲くんです だれも見てくれなくても一生懸命咲いているところが綺麗だと思うんです 俺もちょっとはロマンチストの部分を持っているのです」と少年のような笑顔でマジ照れた。
わたくし隊長 マジで女子じゃなくて良かった
危なく恋に落ちそうになった(笑)

そしてこの晩は名酒「大雪渓」の一升瓶が軽くあき、まだまだ山談義は続くのであった。
それからしばらくしてわたくし隊長、再び乗鞍にまたまたお邪魔。
「乗鞍の紅葉は最高だよ!しかも2700mまで車で登れちゃうから無精もんのケイザブローくんでもOK」のひとことにほだされ、すぐ乗鞍に戻って来ちゃいました。

再び乗鞍に帰って参りました。そして見よ!この紅葉。

いや〜!ここの紅葉はものが違うね?まず車で登ってくる時、自分の周りがすべてオレンジ、黄色、赤、朱、みどり、素敵な色達が素敵なコントラストを作り出し、まるで「神様が作ったすてきな箱庭」みたいになっていて、思わず生唾ゴックンものですよ。お酒じゃなくて本物の大雪渓もその色彩の中に加わってさらに輝きが増していました。個人的にはすべての紅葉に日が射した時のあの透明感にやられました。(なんだかおいしいゼリーみたいなんだよね?)
これから紅葉はどんどん標高の低い所に降りて来て見頃の本番はまさにこれから!
とにかく足を運べば自分の大好きな色、きっと見つかりますよ!
ほんとここの紅葉は光の放つ量がまったく違うんだから、、、、、

日本とは思えないこの色のコントラスト。ここはどこ?私は隊長!

一瞬垣間見えた青空。このデカイ景色が本物の男をつくり出すのだ!

そしていつも感じるのが「一緒に遊んでくれる」方によって同じ費やす時間の深さが違ってくる。
わたしは今回、本当に楽しかった。
タツミさんと同じ渓流に入れて、同じ風を感じ、囲炉裏を囲んで同じ酒を呑んだ。
人間 絶対にかなわない人間の話を聞くときが一番楽しい。
タツミさん!本当にありがとうございました。
でも今度お邪魔したときはタツミさんよりデカイの釣らせてもらいます(笑)

囲炉裏があるペンション「風のチムニー」。さすが分かってらっしゃいます!

そしてみなさんも機会があったらタツミさんのいる乗鞍高原にあるペンション「風のチムニー」を訪ねてみてください!
きっと眠れないほど楽しくなっちゃうよ!

>>> 乗鞍高原 風のチムニー <<<

釣り好きの方は頭から、そうでもない方は6分ぐらいから見てちょうだい!

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